動画制作に利用できる補助金・助成金|種類や申請方法を徹底解説

動画コンテンツの需要が高まる中、制作費用の捻出に頭を悩ませる企業も多いでしょう。実は動画制作には、様々な補助金や助成金を活用できます。
本記事では、動画制作に利用可能な補助金の種類や申請方法を詳しく解説します。適切な補助金を活用することで、予算を効率的に運用しながら質の高い動画制作が実現できます。
補助金申請をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
動画制作に利用できる補助金・助成金の種類
動画制作に活用できる主な補助金には、以下の4種類があります。企業規模や目的に応じて、最適な補助金を選択することが重要です。
補助金名 | 最大補助額 | 最大補助率 | 申請方法 |
小規模事業者持続化補助金 | 200万円 | 1/2 | 電子申請または郵送申請 |
IT導入補助金 | 450万円 | 1/2 | 電子申請 |
事業再構築補助金 | 1億5,000万円 | 2/3(条件により1/2) | 電子申請 |
自治体の補助金 | 各自治体指定 | 各自治体指定 | 各自治体指定 |
小規模事業者持続化補助金
中小企業庁が運営するこの制度は、小規模事業者の販路開拓や生産性向上を支援するための補助金です。動画制作を通じた事業PRや商品紹介などに活用できます。
事業者の経営計画に基づいた経費の一部について、補助を受けることができます。
小規模事業者持続化補助金の対象者と条件
小規模事業者持続化補助金を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。業種によって従業員数の基準が異なるため、申請前に自社が該当するか確認しましょう。
業種区分 | 従業員数の上限 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業以外) | 5人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
NPO法人の場合は、特定の要件を満たす必要があります。
要件 | 内容 |
NPO法人である | NPO法に基づき法人格を取得している
(法人格でなければ非該当) |
収益事業をしている | 事業所得において法人税を納めている |
認定特定非営利活動法人でない | 法人税の優遇を受けていない |
従業員数が20人以下 | 常時使用する従業員が該当 |
これらの要件を満たさなければ、申請しても基本的には受理してもらえません。申請前に、商工会議所や商工会に相談することをお勧めします。
小規模事業者持続化補助金の対象経費
動画制作に関連する主な対象経費は以下の通りです。
経費区分 | 内容例 |
広報費 | 動画制作費、編集費 |
ウェブサイト関連費 | 動画掲載ページ制作費 |
委託・外注費 | 撮影委託費、ナレーション収録費 |
これらの経費は、申請時に提出する経営計画に沿った内容である必要があります。また、支払いの証明書類をしっかりと保管しておくことが重要です。
小規模事業者持続化補助金の補助率と補助金の上限額
補助率と上限額は申請する枠によって異なります。
申請枠 | 補助上限額 | 補助率 |
通常枠 | 50万円 | 2/3 |
賃金引上げ枠 | 200万円 | 2/3 |
卒業枠 | 200万円 | 2/3 |
後継者支援枠 | 200万円 | 2/3 |
創業枠 | 200万円 | 2/3 |
赤字事業者の場合は、補助率が3/4になります。ただし、一度の公募で申請できるのは1つの枠のみです。
商工会議所または商工会の支援とは
申請には商工会議所または商工会の支援と承認が必要となります。地域によって管轄が異なるため、最初に担当を確認することが大切です。
項目 | 商工会議所 | 商工会 |
所管 | 経済産業省 経済産業政策局 | 経済産業省 中小企業庁 |
地域範囲 | 市の区域 | 町や村の区域 |
事業内容 | 中小企業支援、国際活動など | 小規模事業施策中心 |
具体的に商工会議所や商工会は、事業支援計画書の発行や相談・助言といった支援をします。まずは申請に必要な書類として、経営計画書や補助事業計画書を自社で作成しましょう。
これらの書類作成が完了したら、商工会議所に赴いて事業支援計画書の申請をします。
経営計画書や補助事業計画書を商工会議所に提出する中で、記載内容に関するアドバイスももらえます。相談に対応できるのは申請事業者本人であり、代理人では事業支援計画書の発行依頼ができません。
商工会議所や商工会の会員でなくても申請は可能です。所属が不明な場合は、地方自治体に問い合わせることをお勧めします。
支援依頼時には、経営のアドバイスや事業内容に関する質問を受けることがあるため、事前に回答を準備しておきましょう。
小規模事業者持続化補助金の申請手順
申請は以下の手順で進めます。
1.申請書類の準備
以下の書類を準備します。
・経営計画書兼補助事業計画書
・事業支援計画書
・補助金交付申請書
・宣誓・同意書
2.事業支援計画書の作成依頼
商工会または商工会議所の指導員に相談し、「事業支援計画書」の作成を依頼します。
3.申請書類の提出
準備した全ての書類を補助金事務局へ提出します。
4.採択結果の確認
審査結果を受け取り、採択された場合は事業を開始します。
5.実施内容と経費の報告
実施した内容や経費を詳細に報告します。
6.補助金の受領報告
内容が認められた場合、指定口座に補助金が振り込まれます。
IT導入補助金
中小企業・小規模事業者の生産性向上を目的としたIT化を支援する制度です。動画制作ソフトウェアや関連システムの導入、クラウドサービスの利用などに活用できます。
IT導入補助金の対象者と条件
対象となる企業規模は業種によって異なります。主な基準は以下の通りです。
業種 | 資本金 | 従業員数 |
製造業 | 3億円以下 | 300名以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100名以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100名以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50名以下 |
申請には以下の条件を満たす必要があります。
1.日本国内で事業を展開していること。
2.地域別最低賃金以上の給与を支払っていること。
3.gBizIDプライムを取得していること。
IT導入補助金の対象ツール
動画制作に関連する対象経費は以下の通りです。
費用区分 | 対象例 |
ソフトウェア費用 | 動画編集ソフト、素材管理システム |
クラウドサービス | オンライン編集ツール、動画配信システム |
導入関連費用 | 操作研修、マニュアル作成 |
導入を検討するツールが補助金の対象として認定されているか、事前に確認することが重要です。
IT導入補助金の補助割合と補助率の上限額
補助枠によって補助率と上限額が異なります。主な枠の内容は以下の通りです。
申請枠 | 補助率 | 補助上限額 |
通常枠 | 1/2以内 | 450万円 |
セキュリティ対策推進枠 | 1/2以内 | 100万円 |
デジタル化基盤導入枠 | 3/4以内(50万円以下)2/3以内(350万円以下) | 350万円 |
インボイス枠 | 2/3以内(中小企業)1/2以内(その他) | 350万円 |
IT導入補助金の申請手順
1.gBizIDプライムアカウントの取得
必要書類を準備し、申請書と印鑑証明書を郵送します。
2.SECURITY ACTIONの実施
基本的なセキュリティ対策の自己宣言を行います。
3.経営状況の確認
「みらデジ」プラットフォームで経営診断を実施します。
4.ITツールの選定
課題解決に最適なITツールを選び、IT導入支援事業者と相談します。
5.申請と結果通知
審査を経て、交付決定の通知を受け取ります。
なお、交付決定前の契約や発注は補助金の対象外となるため、必ず通知を受けてから進めることが重要です。
IT導入補助金の申請先はこちら(※2025年度以降はリンクが変わる可能性あり)
事業再構築補助金
事業の再構築を目指す中小企業・中堅企業向けの補助金です。動画制作部門の新設や、動画制作を活用した新事業展開などに利用できます。
複数の申請枠があり、事業規模や目的に応じて選択することが可能です。
事業再構築補助金の対象者と条件
業種ごとに定められた基準を満たす必要があります。
業種 | 資本金 | 従業員数 |
製造業 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
申請には以下の基本要件を満たすことが必要です。
1.日本国内に本社があること。
2.事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関に確認してもらうこと。
3.事業再構築の内容が、一定以上の付加価値を生み出すこと。
事業再構築補助金の対象経費
動画制作に関連する主な対象経費は以下の通りです。
経費区分 | 具体例 |
建物費 | 撮影スタジオの整備費用 |
機械装置費 | カメラ機材、編集設備 |
システム構築費 | 配信システム、管理ツール |
外注費 | 専門家への制作委託費 |
技術導入費 | 新技術の導入費用 |
広告宣伝費 | プロモーション費用 |
事業再構築補助金の補助率と補助上限額
申請枠によって補助率と上限額が異なります。主な枠の詳細は以下の通りです。
申請枠 | 対象 | 補助上限額 | 補助率 |
成長分野進出枠 | 成長分野への進出 | 3,000万円~4,000万円 | 中小企業:1/2 中堅企業:1/3 |
GX進出類型 | 環境関連分野 | 5,000万円~1.5億円 | 中小企業:1/2 中堅企業:1/3 |
コロナ回復加速化枠 | 事業再生支援 | 2,000万円 | 中小企業:2/3 中堅企業:1/2 |
サプライチェーン強靱化枠 | 供給網強化 | 3億円~5億円 | 中小企業:1/2 中堅企業:1/3 |
事業再構築補助金の申請手順
申請は以下の手順で進めます。
1.gBizIDプライムアカウントの取得
申請に必要な基本情報を登録します。
2.事業計画書の作成
認定経営革新等支援機関と相談しながら作成します。
3.必要書類の準備と確認
事業計画書の他、財務諸表や許認可書類を用意します。
4.電子申請システムでの申請
すべての書類を電子申請システムに登録します。
5.審査結果の確認
採択された場合、交付申請の手続きを開始します。
動画制作に利用できる地方自治体の補助金・助成金の探し方
動画制作に活用できる地方自治体の補助金を見つけるには、以下の情報サイトが役立ちます。
サイト | 特徴 |
ミラサポPlus | 国が提供している中小企業・小規模事業者向けの支援施策を提供するポータルサイト |
補助金ポータル | 全国の補助金・助成金に関する情報を都道府県別・市町村別に検索できるサイト |
J-NET21 | 補助金のみならず経営に役立つ情報を提供する中小企業基盤整備機構のサイト |
ミラサポPlus
中小企業・小規模事業者向けの支援施策を一元的に提供する国の公式サイトです。動画制作に関連する補助金を探す際の基本となるポータルサイトとして活用できます。
経営課題や事業規模に応じた支援制度を簡単に検索できる機能を備えています。補助金の申請方法も分かりやすく解説されているため、初めて補助金を利用する事業者でも安心して情報収集できます。
また、定期的に更新される施策情報をチェックすることで、新しい支援制度もいち早く把握できます。
補助金ポータル
全国の補助金・助成金情報を網羅的に集約したサイトです。複雑な補助金情報を分かりやすく整理し、必要な情報にすぐにアクセスできる仕組みを提供しています。
地域別の詳細な検索機能により、自社が利用可能な地方自治体の補助金を効率的に見つけることができます。
また、業種や事業目的での絞り込みも可能なため、動画制作に特化した補助金情報も素早く見つけられます。申請期限が近い補助金は特別に表示されるため、見逃しを防ぐことができます。
J-NET21
中小企業基盤整備機構が運営する総合情報サイトです。補助金情報に加え、経営に役立つ情報も充実しています。
毎日更新される支援情報により、最新の補助金制度をタイムリーに把握できます。経営ハンドブックには補助金申請に必要な事業計画の立て方も掲載されており、申請の準備に役立ちます。
また、過去の採択事例も数多く紹介されているため、申請書作成時の参考にすることができます。
補助金を申請する際の注意点
動画制作に関する補助金を申請する際は、以下の点に特に注意が必要です。
補助金の採択率は意外と低い
採択率は補助金の種類によって大きく異なります。例えば、令和6年の事業再構築補助金の採択率は26.4%でした。9,207件の申請に対して採択されたのは2,437件でした。
採択率が低い主な理由は、申請書の内容が審査基準を十分に満たしていない場合や、競合する申請が多い場合などです。採択率を上げるには、申請書の質を高め、他社との差別化を図ることが重要です。
申請期限内でも予算枠が埋まると申請できなくなる
多くの補助金制度では、予算に限りがあります。申請期間内であっても、予算枠に達した時点で受付が終了します。そのため、公募開始と同時に申請の準備を始めることが大切です。
採択率を高めるコツと成功のポイント
補助金の採択率を高めるために、効果的な取り組み方をご紹介します。
過去の採択事例を活かした事業計画書を作成する
過去に採択された事業の事例集は、申請書作成の貴重な参考資料となります。
採択事例に共通する特徴を分析し、自社の事業計画に取り入れることで、審査基準に沿った効果的な申請書を作成できます。
商工会議所や専門の申請支援サービスを活用する
補助金申請には複雑な書類作成や具体的な事業計画の立案が必要です。商工会議所の経営指導員や専門の申請支援サービスを活用することで、採択率を高めることができます。
動画制作で補助金を活用した事例
動画制作で補助金を活用し、成功した事例について紹介します。さまざまな企業の事例を参考にしつつ、補助金をどのように生かせばよいか押さえてください。
etuad(エチュード)|小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金が活用された事例として、etuad(エチュード)が挙げられます。
etuadはホームページ制作に取り組む個人事業主ですが、事業の一環としてドローンを使った映像作成に参入しようと考えていました。
そこで小規模事業者持続化補助金を活用し、ドローン事業にも本格的に着手しました。空撮画像や映像をホームページにも掲載し、観光PRや企業PRのプロモーション映像制作にも取り組みます。
ドローン事業に着手したことで、周囲のホームページ制作会社との差別化を図れた事例です。
有限会社アップル|事業再構築補助金
有限会社アップルは、千葉県に拠点を持つ写真スタジオです。証明写真やスタジオ写真の提供を主な事業としています。
当該企業は地元の成田市において、企業のPR動画を制作するという新たな事業に挑戦しようと考えました。その事業に取り組む中で、事業再構築補助金を申請します。
その結果動画カメラを導入し、シネマ映画のような動画を制作する事業に着手しています。静止画の技術も生かしつつ、視聴者の購買意欲の向上に貢献できるのが強みです。
株式会社ウツワニウム|事業再構築補助金
株式会社ウツワニウムは、映像制作やWebサイト制作を提供している企業です。こちらの企業は、BtoB向けに動画制作の企画から編集までを支援するサービスを提供しようとしました。
そこでリモートワークにより利用頻度が減少したオフィスを改装し、YouTubeスタジオの新設を計画します。
その改装作業において、事業再構築補助金を活用しました。このように補助金を、動画撮影の環境整備に生かすといった方法もあります。
動画制作に補助金を活用してビジネスを成長させよう
事業規模や目的に合った補助金選びが採択への第一歩となります。小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金、事業再構築補助金など、状況に応じて最適な制度を選択しましょう。
申請の準備は早めに始め、専門家のアドバイスも取り入れながら説得力のある事業計画を立てることが重要です。
補助金は一時的な支援ではなく、事業成長への投資として捉え、動画制作の技術やノウハウを蓄積していくことで、継続的な事業展開につなげることができます。
補助金を効果的に活用し、自社の成長戦略を実現していきましょう。