MECE(ミーシー)とは?ビジネスでの重要性やフレームワークも紹介
MECE(ミーシー)の言葉自体は知っていても、その内容について詳しくは分からないという方は多いのではないでしょうか。
MECEはロジカルシンキングをする上で、非常に大切なものです。
この記事ではMECEの意味や重要性について紹介していきます。「どのような切り口で考えていけばいいのか」などもまとめているので、ロジカルシンキングを強化したい方は、ぜひ最後までお読みください。
MECE(ミーシー)とは?意味や基本の考え方を解説
MECEは、ビジネスで使われるロジカルシンキングの基本です。
MECEの意味や基本の考え方を知ることで、ロジカルシンキングが強化されたり、マーケティングにも活用できたりします。ここでは、MECEの意味や基本の考え方について解説していきます。
MECE(ミーシー)=「漏れなく、ダブりなく」
MECEは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字を取った言葉です。
・Mutually:互いに
・Exclusive:ダブらずに
・Collectively:まとめて
・Exhaustive:漏れなく
それぞれの単語の意味をまとめて「漏れなく、ダブりなく」という意味で使われます。
具体例をもとにMECEの理解を深めよう
MECEについて理解を深めるために「MECEとMECEでない状態」を比較してみましょう。まずMECEは「漏れなく、ダブりなく」の状態なので、これ以外は「MECEではない状態」ということです。MECEでない状態は3つあります。
・漏れあり、ダブりあり
・漏れあり、ダブりなし
・漏れなし、ダブりあり
MECEでない場合は、漏れていたり、ダブっていたりと「物事を考える上で、不完全な状態」であることが分かるでしょう。
MECEではない状態の具体例
MECEではない状態について、具体例を交えてご紹介します。ここでは「新商品のターゲット層を分類する」というマーケティングの場面を例にして、MECEではない状態について解説します。
MECEではない例①漏れはないがダブりがあるパターン
「漏れはないが、ダブりがある」というターゲット層の分類の例は、次の通りです。
・男性
・女性
・子ども
この分類だと「子ども」は男性と女性でダブってしまう項目があるので、MECEではありません。
MECEではない例②ダブりはないが漏れがあるパターン
「ダブりはないが漏れがある」というターゲット層の分類の例は、次の通りです。
・20代
・30代
・40代
・50代
この分類だと「20代未満」と「60代以上」が漏れているので、MECEではありません。
MECEではない例③漏れもダブりもあるパターン
「漏れもダブりもある」というターゲット層の分類の例は、次の通りです。
・小学生
・中学生
・高校生
・予備校生
学生に絞って分類していますが、これでは「高専生・短大生・大学生・大学院生」が漏れています。また予備校に通う高校生もいるため、項目もダブっている状態です。
そのため「漏れもダブりもある」という分類になっています。MECEにするには「予備校生を除外する」「高専生・短大生・大学生・大学院生を含む」必要があります。
MECEである状態の具体例
MECEではない状態の具体例を3つご紹介しましたが、これらを「MECEである状態」にするには、下記のように分類する必要があります。
・性別:「男性」「女性」で分類する(子どもの項目は削除)
・年代:「10代未満」「20代」「30代」「40代」「50代」「60代以上」で分類する
・学生:「小学生」「中学生」「高校生」「高専生・短大生・大学生・大学院生」で分類する(予備校生の項目は削除)
「MECEであるかどうか」を判断するためにも、分類したら「漏れはないか」「被っている項目はないか」を確認するようにしましょう。
ビジネスシーンにもMECEは欠かせない
MECEは、ビジネスシーンにも欠かせない考え方です。ここでは、MECEの重要性とどのようなビジネスシーンで活用できるかを解説します。
ビジネスにMECEの考え方が重要とされる理由
ビジネスにMECEの考え方が重要とされる理由は2つあります。
・「そもそも考慮できていなかった」という事態を防げる
・効率よく問題解決ができる
まず1つ目ですが、MECEの考え方を徹底すれば「そもそも考慮できていなかった」という事態を防げます。
例えば、新商品のマーケティング施策を考える際にMECEの考え方ができていなければ「20代未満への施策を考えられてなかった」という事態に陥る可能性があります。しかし、MECEの考え方ができていれば「20歳未満への施策が漏れている」ことに気付けるでしょう。
2つ目ですが、MECEの考え方をすれば、問題が起きた際に「何が原因なのか?」を切り分けやすくなります。もしMECEの考え方ができていなければ、原因の切り分けの際に要因が漏れてしまったり、ダブってしまったりするので、効率よく問題解決ができません。
問題を効率よく解決するためにもMECEの考え方は大切といえるでしょう。以上2つの理由から、MECEの考え方はビジネスシーンで重要とされています。
MECEを活用できるビジネスシーンとは?
MECEは、次のようなビジネスシーンで活用できます。
・自社サービスのマーケティング施策を考えるとき
・発生した問題の要因を切り分けるとき
またMECEの考え方を身に付けることで、他のシーンでもロジカルシンキングの癖が付くため、ぜひ活用していきましょう。
MECEは2つの種類で考えることが可能
考え方の切り口を知っておくことで、スムーズにMECEの思考ができるようになります。ここでは2つに分類されるMECEの考え方について解説していきます。
①アプローチ方法で考える
まず1つ目は「アプローチ方法」です。アプローチ方法で考える場合「トップダウンアプローチ」と「ボトムダウンアプローチ」の2つの考え方をします。
1.トップダウンアプローチ
全体を見て大枠を選択し、そこに要素を当てはめるのがトップダウンアプローチです。分析の手順は次の通りです。
・全体の要件を選択する
・大枠で分類する
・分類の過程で必要な要素を洗い出す
・必要があれば、さらに要素を分類する
要するに「大きな分類から、小さい分類に細分化していく」アプローチの仕方です。ゴールが明確な場合は分類しやすいアプローチですが、全体像が分かっていない段階では使いにくいというデメリットがあります。
2.ボトムダウンアプローチ
頭に思い浮かんだ要素を洗い出していき、その中からグルーピングをして全体像を描いていくのがボトムダウンアプローチです。分析の手順は次の通りです。
・頭に浮かんだ要素を紙に書き出していく
・要素を種類別にグルーピングしていく
・グルーピングの最中に新しい要素(漏れ)が浮かんだら追加していく
小さい要素から分類していくため、全体像が分かっていなくても使えるのがメリットです。
一方で要素の漏れに気づきにくい方法でもあるため、全体像が分かっている場合はトップダウンアプローチを使いましょう。
②分解方法で考える
MECEは4つの分解方法で考えられます。
・要素分解
・因数分解
・時系列・ステップ分け
・対照概念
それぞれの考え方について、解説していきます。
1.要素分解
要素分解とは、思考対象を全体から要素へと分解していき、部分集合へと切り分けていくことです。分解した要素の合計は「全体集合」になるので「足し算型」と呼ばれることもあります。
2.因数分解
因数分解とは、分析対象を計算式で表現し、各要素に分解していくことです。
例えば、分析対象が売上の場合は「顧客単価×顧客数」のように分解します。計算式に掛け算を使うことが多いので、因数分解は「掛け算型」と呼ばれることもあります。
3.時系列・ステップ分け
時系列・ステップ分けとは、 その名の通り時系列で分解していくことです。
例えば有名な例に「プロダクト・ライフサイクル」があります。これは商品のサイクルを「導入期・成長期・成熟期・衰退期」の4ステップに分解したものです。他にも「バリューチェーン」「AIDMA」などで時系列・ステップ分けの考え方が使われています。
4.対照概念
対照概念とは、分析対象の対照的な概念を挙げていくことです。以下のようなものが対照概念といえます。
・質と量
・主観と客観
・メリットとデメリット
MECEで論理的思考を鍛えるためのフレームワーク一覧
MECEの考え方はフレームワークに当てはめるだけで実現でき、その過程で論理的思考も鍛えられます。ここでは、MECEを活用できるフレームワークの代表例を7つご紹介します。
1.3C分析
3C分析は、事業計画などを3つの要素に分けて考えるフレームワークです。
・自社(Customer)
・競合(Competitor)
・市場(Company)
3C分析に当てはめることで「自社と競合については分析したが、市場分析を忘れていた」などの漏れを防げるのが特徴です。
2.4P分析
4P分析は、マーケティングの施策を4つの要素に分けて考えるフレームワークです。
・Product(製品・サービス)
・Price(価格)
・Place(販売場所・提供方法)
・Promotion(販促活動)
4P分析に当てはめることで「そのようなサービスを、いくらで、どのように提供して、どう販売を促進させるか」を漏れなく考えられます。
3.SWOT分析
SWOT分析は、自社サービスの戦略を「競合や市場などの外部環境」「資産や品質などの内部環境」のプラス要素とマイナス要素に分けて考えるフレームワークです。
・Strength(自社の強み)
・Weakness(自社の弱み)
・Opportunity(プラスに働く外部環境の機会)
・Threat(マイナスに働く外部環境の脅威)
SWOT分析に当てはめることで「今のサービスを、どのように改善していく必要があるのか」を漏れなく考えられます。
4.PDCA
PDCAは「仮説と検証を繰り返すことで、どのようにプロセスを改善すればいいのか」を明確にするフレームワークです。
・Plan(計画)
・Do(実行)
・Check(評価)
・Action(改善)
PDCAに当てはめることで、自然と「どこが問題で、次はどのように改善していけばいいのか」を考えられるようになります。
5.フォース分析
フォース分析は「5つの競争要因(脅威)から業界の構造を分析し、自社がどのような戦略を取ればいいのか」を明確にするフレームワークです。
・新規に参入する企業との競争
・既存の競合企業との競争
・代替製品の存在
・顧客の交渉力
・売り手の交渉力
フォース分析に当てはめることで「自社の優位性は何か?」を考えられます。
6.バリューチェーン
バリューチェーンは、企業の活動を価値(バリュー)の連鎖(チェーン)として考えるフレームワークのことです。
バリューチェーンでは、企業の活動を「主活動」「支援活動」の2つに大別します。
・主活動:商品・サービスを顧客に届けるまでの主な活動のこと
(原材料の入手・製造・物流・マーケティング・アフターサービスまで)
・支援活動:主活動を支えるサポート的な活動のこと
(全般管理・人事労務管理・技術開発・調達が主な例)
バリューチェーンに当てはめることで「自社はどこが強みで、逆にどこが弱みなのか」を考えられるので、企業活動の改善に生かせます。
7.ロジックツリー
ロジックツリーは、物事をツリー(階層)状に分解することで、論理的に原因や解決策を導き出せるフレームワークです。ロジックツリーには4つのパターンがあります。
・要素分解ツリー:物事を構成する要素をツリー状に分解するパターン
・原因究明ツリー:問題を軸にして原因を列挙し、根本原因を突き詰めるパターン
・問題解決ツリー:問題を軸にして解決案を列挙し、どの案を採用するのかを明確にするパターン
・KPIツリー:最終目標(KGI)を軸にして中間目標(KPI)を設定し、中間目標を達成するためのアクションを設定するパターン
それぞれの目的に応じて、ロジックツリーを使い分けましょう。
まとめ
ロジカルシンキングをするためにも、MECEの考え方は非常に大切です。最初は取っつきにくい部分もあるので「フレームワーク一覧」をもとに思考するのがおすすめです。
MECEの考え方を実現できると「考慮不足を防げる」「効率よく問題を解決できる」というメリットがあるため、ぜひ実践してみてください。