2:8の法則とは?組織の中で仕事に活用するポイントや具体例を解説
2:8の法則を業務に取り入れることで、ビジネスの拡大や業務効率化が期待できます。しかし2:8の法則について、いまいち理解できていない方もいるのではないでしょうか?そこで本記事では
・そもそも2:8の法則とは、どういった内容なのか
・具体的にどのように業務に活かすのか
・どのようなメリットや注意点があるのか
など、2:8の法則について事例を交えながらわかりやすく解説していきます。ぜひビジネス発展のヒントとして役立ててください。
2:8の法則(パレートの法則)とは
2:8の法則とは、20%の少数が全体の80%に貢献している現象のことです。別名「パレートの法則」とも呼ばれています。マーケティングなどのビジネスの他、日常の様々な事象にも当てはまることで有名です。
2:8の法則の中身について具体的に見ていきましょう。
イタリアの経済学者が提唱したビジネスに活用できる法則
2:8の法則は、イタリアの経済学者ヴィルフレッド・パレート氏によって発見されたものです。1896年に発表された論文の中では「社会全体の所得の80%は、20%の高所得者層によって生み出されている」とのこと。
この発見後、先述した割合を意識することが、ビジネスを効果的・効率的に発展させるための一つのスタンダードになりました。
重要な顧客の見極めと少数のターゲットへの効率的な施策立案ができるため、様々なビジネスシーンでマーケティング戦略を考える際に重要な視点となります。
2:8の割合は、様々な事象にあてはまる
2:8の法則は、ビジネスシーンのみでなく、日常の様々な場面に当てはまるといわれています。例えば、次のような内容です。
・勉強で得られた知識の80%は、学習時間全体の20%の時間で習得できている
・アドレス帳に入っている友人のうち、80%の時間は20%の人たちと連絡を取っている
このように、私たちの行動特性を経験則的に理解できることが、2:8の法則の特徴です。ビジネスも日常生活も「人」によって営まれている活動において、広く適用できる法則を頭に入れておくことは、豊かな人生を歩むために重要といえるでしょう。
よく似た法則に2:6:2(働きアリ)の法則もある
2:8の法則に似ているものとして「2:6:2の法則(別名働きアリの法則)」があります。この法則は組織運営の文脈で参考にされるもので、集団生活を営むアリの行動特性が以下のように分類されることを提唱したものです。
・全体の20%:よく働くアリ
・全体の60%:普通に働くアリ
・全体の20%:働かないアリ
興味深いのは、仮に20%を占める「よく働くアリ」を集団から取り除いても、それぞれの割合は再び同じ2:6:2の割合に収束していくことです。企業の労働者も基本的にはこの割合に落ち着いていくことを念頭に置いておくと、人材の適性配置がスムーズにできます。
ビジネスの中で2:8の法則があてはまる具体例
ビジネスの中で、2:8の法則が当てはまる事例はどのようなものがあるでしょうか?ご自身の仕事や組織に当てはめる際に具体的なイメージを持っていただくために、どのようなビジネスシーンで2:8の法則が見受けられるのかをご紹介していきます。
例1:組織や仕事の成果
・全社の売上の80%は、全体の20%の社員の働きによって発生している
・1人の社員が出す成果の80%は、全体の20%の業務時間で発生している
組織運営において、2:8の法則を意識することは重要です。優れた能力を持った社員でも、より優れた社員が多い部署に配属すると、相対的にその他80%の貢献しかできなくなってしまいます。
また、働き方改革を推進する上で、成果に直結する時間の使い方を特定できれば、業務の優先順位を改善することもできるでしょう。
例2:マーケティングやセールス
・売上の80%は、全体の20%の顧客によって発生している
・売上の80%は、全体の20%のセールス担当によって発生している
売上を顧客ベースで計算してみると「一部の優良顧客に集中していたことがわかった」経験はありませんか?膨大な数の顧客から声を集めることはもちろん重要になりますが、時間という有限なリソースを配分する先として、メリハリをつけることは大切です。
そして、顧客と接するセールス担当の貢献度合いも慎重に見極めることが求められます。せっかく特定した少数の優良顧客に対して、売上に貢献していない営業マンをあてがってしまうと、会社にとっても本人にとっても機会損失が大きいです。
例3:WEBマーケティング
・検索流入の80%は、上位表示できているキーワード全体の20%から発生している
・広告からの成約の80%は、表示している広告全体の20%で発生している
やみくもに対応キーワードを増やしても、必ずしも右肩上がりに検索からの流入が増えるとは限りません。特定のキーワードがヒットしたことをきっかけに、数字が跳ね上がることも珍しくないのは、貢献しているキーワードが限られているためです。
また、広告出稿の費用対効果を上げる上でも、どの広告に成約が集中しているのかを見極めることは重要といえます。
うまくいっている広告出稿の手法を横展開したり、成約率が低い広告の出稿停止サイトのユーザビリティを高めたりするなど、データを見ながら検証を継続していきましょう。
2:8の法則をビジネスで活用するポイント2つ
2:8の法則をビジネスに適用する際に重要なことは「データの傾向を見抜く癖をつけること」です。ただ単に数字を上から下まで眺めているだけでは、数字が持つ意味を体形的に理解できません。
どのような状況を特定したいのかあらかじめ当たりをつけることで、効率的な分析が可能になります。
ポイント1.自社の売上データを見直して分析する
以下のような観点を持って、自社の売上データを見直してみてください。
・どの商品に売上が集中しているのか
・どの顧客属性からの売上が多いのか
・どの部署、社員の売上が全社に貢献しているのか
まずは、売上の80%の傾向を分析することが重要です。分析することで企業としての強みがわかります。それに加えて競合比較をすることで、特定分野への注力によってシェアを伸ばす余地があるのかどうかがわかります。
いたずらに新規事業を立ち上げるのではなく、伸ばす余地のある分野にリソースを割くことで、短期間で利益を伸ばすことも可能でしょう。
ポイント2.コストを抑えて重要な仕事に注力する
売上80%の傾向をつかんだ後は、20%の売上に紐づくコストをいかに抑えるかを考えてみましょう。売上の大部分を占める80%へ注力をするためにも、割けるリソースの幅を広げる必要があるためです。
売上に貢献していないコンテンツを思い切って削除するなど、存在するだけでかかっている管理コストを意識してみてください。20%側の管理にかかっていた人件費や運営費用を80%側の商品に移すことで、有力商品の品質改善、引いては売上に大きく貢献することが見込めます。
WEBマーケティングで2:8の法則を活用する具体策
WEBマーケティングで2:8の活用を進めるためには、リソース配分が重要といえます。店舗ビジネスとは異なり、WEB上には無数のコンテンツを表示できるがゆえに、売上構成の20%側の内容が多くなりがちであるためです。
顧客に提示するコンテンツの配分をどのように考えればいいのか、具体策を4つご紹介します。
具体策1.売れ筋商品を前面に出す
トップページからの距離は成約率に大きく影響します。アクセスがあっても成約しない商品を貴重なトップページに配置するのは、非効率的です。そこで売りたい商品ではなく、売れている商品を前面に出すことで、収益改善が実現できます。
売れていない商品はニーズがない可能性もあるため、販売戦略自体を見直すきっかけにもなるでしょう。また、売れ筋商品のアイキャッチや記事タイトルをブラッシュアップするなど、WEBサイト全体の顔となる商品の品質改善は怠らないように注意しましょう。
具体策2.アクセスが集まっているコンテンツを充実させる
アクセスが集まっているコンテンツは、対応するべき優先度が高いといえます。なぜならそのコンテンツをきっかけに、新規顧客の獲得や収益性の高いページへの誘導など、幅広い効果を生み出す可能性が高いためです。
競合との比較もしながら、よりわかりやすく顧客の悩みに響くコンテンツに改善してみてください。また、アクセスの流入経路を確認して特定のキーワードやSNSの露出を増やすなど、周辺情報を充実させることも大事です。
自社メディアの中での回遊が増えることで、媒体全体のアクセスアップに繋がります。
具体策3.優良顧客に手厚いサービスを提供する
優良顧客を特定できた後は、その層に向けてのサービスを充実させることも重要です。優遇されたユーザーのロイヤリティがさらに高まり、リピート率の上昇と口コミによる拡販の可能性もあります。
特定の顧客へアプローチするには、会員制度を設置するなどの方法が有効です。サービスの利用期間や毎月の購入金額など、一定の閾値を超えたユーザーが特別な会員に移行できる環境を構築してみてください。
継続的なコンタクトのチャネルができることで、顧客対応の効率化にも繋がるでしょう。
具体策4.「2:8の法則」をベースとしたABC分析を用いる
ABC分析とは、特定の重要指標に基づいて、商品を3層の重要度別に分けて管理する手法を指します。
重要指標とは、例えば以下のものです。
・売上金額
・利益率
・生産と管理コスト
ABC分析は、2:8の法則がもととなっている手法です。「少数の売上構成比が高い商品に注力することで、効率的なマーケティングや経営ができる」という類似の思想で成り立っています。
それぞれの層に対してどのような対応が必要なのかは、次の項目で詳しく見ていきましょう。
ABC分析を経営戦略に役立てよう
経営戦略を立てる際に、ABC分析を用いることは有用といえます。一度分類の枠組みを構築してしまえば、実働部隊への指示を自動化することができ、固めた指標の有効性の検証を行う時間も確保できるためです。
具体的なメリットと分類方法について、次からご説明します。
ABC分析の目的とメリット
ABC分析の目的は、商品にランク付けを行うことで管理指標を明確化することです。メディア全体の品質管理を、一定の水準で行えるメリットがあります。それぞれの層に対するリソース配分ルールが決まれば、その後の2つのステップが自然と導き出されるでしょう。
1.それぞれの層に対するルールを忠実に実行する
2.指標となるデータに変化のあった商品は、層の分類を修正する
注意点として、一度決めた層の区分けとリソース配分のルールは一定期間継続することが重要です。ルールの設計自体に問題がないかを後々検証するために、必要なデータを集めておく必要があります。
分析の手順はABCの分類とパレート図の作成
ABC分析に必要な手順は、次の2つ。
1.商品を3つの層に分類する
2.パレート図を作成して全体の概況を可視化する
分類について、例えば以下のような配置をした場合を考えます。
表1)ABC分類表
ランク | 商品名 | 売上金額 | 売上構成比 | 累計構成比 |
A | パソコン | 300,000円 | 30% | 30% |
A | メモリー | 200,000円 | 20% | 50% |
B | モニター | 150,000円 | 15% | 65% |
B | ハードディスク | 150,000円 | 15% | 80% |
C | ACケーブル | 100,000円 | 10% | 90% |
C | アダプター | 100,000円 | 10% | 100% |
それぞれの層に対して求められるアプローチは次の通りです。
・A層の商品
在庫の欠品や提供サービスのキャパシティ超えなどの事態が発生しないように、常時観測することが求められます。
・B層の商品
在庫補充や品質確認のタイミングを決めておくなど、ルールを決めて、定期的なメンテナンスとして対応を行います。
・C層の商品
あまりコストをかけないことが重要です。場合によっては販売停止を検討するなど、上位商品の比率をいかに高められるかという視点で対応を行います。
また、上記分類表をグラフに起こしたものが「パレート図」です。この図を見ることで、一目で重要商品を特定することが可能になります。上記ABC分類をパレート図で表すと次の通りです。表2)パレート図
2:8の法則の注意点|8割の存在を無視しない
2:8の法則を利用するにあたり、注意点が1点あります。それは、売上への貢献率が低い80%の商品の存在を無視しないこと。上位20%の商品に比べると優先度は下がりますが、80%側の商品が不要ということではありません。
その中から上位20%に昇格する商品も出てくる可能性もありますし、ラインナップの充実というビジネス全体の見た目を担保している側面もあるでしょう。80%側の存在が、あなたのビジネスに作用している影響を特定しておくことは重要です。
オンラインビジネスではロングテールの法則も理解が必要
ビジネスをオンラインで行う上では、2:8の法則とは異なる方向性の考え方である「ロングテールの法則」を理解しておくことも重要です。新しい時代のビジネス環境によって生み出されたロングテールの法則について、次から解説していきます。
ロングテールの法則とは2:8の法則をくつがえす法則のこと
ロングテールの法則は、アメリカのWired誌編集長のクリス・アンダーソン氏が提唱した、2:8の法則を真っ向から否定している理論です。
実店舗を構えたビジネスとは違って、ネットを用いたビジネスでは、在庫管理や流通にかかるコストが低いことが特徴。つまり、多数の商品ラインナップを抱えることがリスクになりにくく、売上構成比では上位80%に組み込めない商品が多く存在します。
そしてその数の膨大さゆえに、最終的な金額として売上に貢献している事実は無視できません。
WEB上のビジネスなら商品数が必要になる場合もある
楽天やAmazonなどの大手ECサイトをイメージしていただくと、ニッチな商品でも取り扱うメリットがわかりやすいです。それは、気軽に商品を検索できるネット環境で「まずはこのサイトをのぞいてみよう」という最初の検索窓口としてのポジショニングを確立できること。
一度目当ての商品の検索が終われば、そこから顧客の回遊が始まる可能性もあります。そのことで本当に売りたい商品への導線が作りだせます。ただしこの戦略を取る際は、他社を凌駕する圧倒的な商品数が必要です。
そこで、企業として目指す事業規模などに応じて、2:8の法則とどちらを優先的に活用するのかは検討の余地があるでしょう。
2:8の法則は時間管理の鉄則でもある
2:8の法則は、商品管理の側面のイメージを強く持っている方も多いかもしれませんが、実は社員の生産性向上のためにも役立つ指標にもなりえます。どのように2:8の法則を業務の時間管理に活用できるのか、次から見ていきましょう。
成果の8割が数々の努力のうち2割によって生み出される
「仕事の成果の80%が、20%の業務時間で創出される」に着目してみましょう。これは80%の業務時間が全く役に立たないというわけでは必ずしもありません。ただし、80%の時間を圧縮する余地があることを頭に入れておくと、時間の使い方を工夫する姿勢が生まれます。
「より短い時間で今と同じ成果を」を求められるビジネスマンや経営者の方は多いでしょう。2:8の法則で考えることで、どの業務時間を削れば最短ルートで成果への還元ができるのか、という視点がもたらされます。
仕事の優先順位や取捨選択に2:8の法則を活用しよう
長期的には業務時間全体の使い方をデザインすることが重要ですが、目の前の仕事の優先順位や取捨選択にも、2:8の法則が活用できます。特に短期期間で成果を出すことが求められる職種の方は、客観的に自身の成果と業務時間の結びつきの割合を計算してみることがおすすめです。
自分がやる必要のない仕事の外注化や、取り組むべき業務の順序の入れ替えなど、具体的な対策に繋げることで、2:8の法則に基づいた業務の効率化が実現できます。
まとめ
本記事では、2:8の法則に関する以下の内容を説明しました。
・2:8の法則をビジネスに活用するポイント
・2:8の法則をWEBマーケティングで活用するための具体策
・2:8の法則を用いたABC分析の方法
・2:8の法則の注意点:8割の存在を無視しない
・オンラインビジネスであれば、ロングテールの法則も理解が必要
・2:8の法則を時間管理にも活用する
2:8の法則は様々なビジネスシーンで適用可能です。特にデータに基づくPDCAサイクルを回しやすいオンラインビジネスでは効果が高いでしょう。今回ご紹介した活用事例を参考に、2:8の法則をご自身の業務に活用し、ビジネスの発展と効率化を実現させていきましょう。