アンゾフマトリクスとは?成長戦略発見のポイントや多角化の型を解説
アンゾフマトリクスをご存じですか?企業の成長戦略や、マーケティング戦略を練る上で大切な基盤となるフレームワークです。活用方法をしっかりと理解すると様々なシーンで活躍するでしょう。
そこで今回は「アンゾフマトリクスとは?成長戦略発見のポイントや多角化の型」を解説していきます。ぜひ参考にしてください。
アンゾフマトリクスとはどのような概念なのか
まず「アンゾフマトリクス」の概念をご説明します。単語自体を聞いたことがない方もいるかと思うので、しっかりと確認し理解するようにしてください。
アンゾフマトリクスとは「経営戦略の父」が提唱したフレームワーク
アンゾフマトリクスとは、経営戦略の父として有名なイゴール・アンゾフという経営学者が提唱したフレームワークです。マトリクスは直訳で、基盤や母体という意味を持ちます。そのため、経営の基盤を整えて拡大や成長を目指す際に用いられるフレームワークです。
アンゾフマトリクスは成長マトリクスとも呼ばれ、縦軸の「市場」、横軸の「製品」で基礎を作り、さらに「既存」「新規」にわけて情報を分割することで、現状に適した戦略を選択できます。
新たな成長戦略を見出したいタイミングで利用しよう
アンゾフマトリクスは既存の事業や戦略で伸び悩み、新たな成長戦略を見つけ出したいタイミングで利用します。成長戦略とは、企業が持続して成長するために必要な戦略や計画を策定することです。
アンゾフマトリクスは経営の基盤を整えて拡大や成長を目指す際に用いられるフレームワークなので、有効活用が可能です。
アンゾフマトリクスを活用する2つのメリット
次に、アンゾフマトリクスを活用するメリットを具体的に説明していきます。実践したことのない方も、ぜひメリットを確認して、活用してみてください。
メリット①これまでにない成長戦略が見つかる可能性がある
1つ目は、これまでにない成長戦略が見つかる可能性があることです。市場や商品、サービスを今一度分析することで、まだ獲得できていない潜在的な顧客を見つけられるでしょう。市場の分析と自社が持つ技術などの強みを掛け合わせることで、新しい成長戦略を見いだせます。
メリット②投資資源の配分をより有効に使えるよう判断できる
経営状態を維持するために自社がもつリソース全体を「経営資源」と呼びます。資金はもちろん人材、モノ(自社名義で保有)などすべてが当てはまります。
アンゾフマトリクスを活用することで、経営資源であるコストや人材、自社名義で所有しているモノを、どの市場や商品・サービスに集中投下するか判断できるようになります。
アンゾフマトリクスの4つの象限
先述したように、アンゾフマトリクスは縦軸の「市場」、横軸の「製品」、その軸をさらに「既存」「新規」と分けた4つの象限で構成されています。ここでは、要素を一つずつ解説していきます。
象限1.市場浸透戦略
まず、左下の「市場浸透戦略」は、既存の市場と既存の商品やサービスを浸透させる・購入してもらう戦略です。具体的な方法は以下が挙げられます。
ポイント① 成長が期待できる商品や顧客にフォーカスする現ターゲットをさらに絞り込み、商品やサービスを展開します。例えば、既存商品でシニア向け商品の売り上げが良好ならば、シニア向けの商品をさらに展開します。 |
ポイント② 革新的な販売方法を検討するターゲットに応じた販売方法を検討します。現状の販売方法が通販のみであれば、ポップアップストアなどで対面販売を行ってみるなど新たな施策を考えます。 |
ポイント③ 付随機能や付帯サービスを検討するただ商品やサービスを提供するのではなく、付加価値を考えます。例えば、購入者にはお試しの商品も一緒に渡したり、割引クーポンを配布するなどが挙げられます。 |
ポイント④ 商品の付加価を上げるもしくは不要な機能を削除する通販などで販売している企業は特に、購入前のユーザーの動きを今一度確認することも大切です。 購入ボタンを邪魔しているレイアウトになっていないか、または意欲的なユーザーに対して別商品をアピールできているかなど、購入の導線を改善することが挙げられます。 |
ポイント⑤
価格設定や品揃えで競合と差別化するセット価格や、継続割引など、大胆かつ強い価格設定を行うのも有効的です。
また、競合他社と差別化できるような商品を数多く展開し、顧客を満足させるという方法も挙げられます。 |
ポイント⑥ 認知度アップやブランディングできるコンテンツを検討するホームページや同業種のメディアなどで、自社の認知度アップに繋がるWebコンテンツを掲載します。幅広いユーザーに届けることで、より多くのユーザーに認知されるでしょう。 |
象限2.新製品開発戦略
次に、右下にあたる「新製品開発戦略」です。既存の市場で既存の顧客に新規の商品やサービスを購入してもらう戦略です。具体的な方法では、以下が挙げられます。
ポイント①自社商品と関連して使用する商品を検討する
自社の商品やサービスを単体で販売するのではなく、関連のある商品との組み合わせ販売やセット販売を検討します。化粧品を販売していれば、化粧時に使用できるコットンやブラシなどが挙げられるでしょう。 |
ポイント②顧客の声をアイデアに活かす
商品やサービスを使用している顧客の口コミやアンケートを収集し、商品の改善や開発に役立てます。実際の顧客の声を取り入れることで企業内の意見だけでなく、客観的な意見も取り入れられます。 |
ポイント③自社商品と相乗効果を発揮しそうな商品やサービスを検討する
自社商品と相性の良い商品やサービスを集め、相乗効果を発揮できるか検討します。例として、衣類等を販売している場合、衣類を長持ちさせる洗剤などが挙げられるでしょう。 |
ポイント④社内にあるノウハウを活かせる商品やサービスを検討する
自社の商品やサービスで活用しているノウハウを活かせる他の商品やサービスがないか、検討します。競合他社はもちろんトレンドや今後の予測も分析し、自社のノウハウが活かせるか確認することが大切です。 |
象限3.新市場開拓戦略
次に、左上にあたる「新市場開拓戦略」です。新規の市場で新規の顧客に既存の商品やサービスを購入してもらうという戦略です。具体的な方法では、以下が挙げられます。
ポイント①未開拓の地に拠点を置くことを検討する
今まで展開していた地域だけではなく、他の地域でも展開できないか検討します。関東のみ対象で販売していた場合、関西や東北など別地域で販売してみる等が挙げられるでしょう。 |
ポイント②成長性の高い事業と関連して何かできないか検討する
現在、既存の商品やサービスと結びつくかは別として、成長性が高いと考えられる事業に関連して少しでも参入できないかを検討します。 |
ポイント③従来とは違う顧客層のニーズへ対応できないか検討する
市場やターゲットが異なる新規の顧客層のニーズに対応できないか検討します。例えば、既存商品で20~30代の女性をターゲットとしている場合、そのノウハウを活かし、40~50代の女性のニーズに対応できるかどうかなどが挙げられます。 |
ポイント④M&Aで新たな顧客層や新たなエリアを開拓できないか検討する
M&Aとは、企業の合併と買収を指します。例えば、別市場の企業を自社で買い取り、新たな顧客層やエリアを開拓できないかを検討します。 |
象限4.多角化戦略
最後は、右上にあたる「多角化戦略」です。新規の市場で新規の顧客に新規の商品やサービスを購入してもらう略です。多角化戦略には4つの型が存在し、それぞれ特徴があります。
下記で詳しくご説明しますので、ご確認ください。
①【水平型】同分野で既存と類似した新規事業を立ち上げる
1つ目は、同分野で既存と類似した新規事業を立ち上げる戦略です。例えば、衣料品事業であれば靴の開発や販売事業を立ち上げます。
新規事業ではあるものの既存事業の知識やノウハウを活かせるため、多角化戦略の中でも着手しやすいでしょう。また、市場浸透戦略や新製品開発戦略と類似していますが、新市場の開拓を目的として取り組む場合もあると認識してください。
②【垂直型】流通や販売の流れの中で領域を開拓する
流通や販売の流れにおいて、領域を開拓する戦略です。イメージとしては現事業の川上や川下の業界を自社で担う形です。
例えば、飲食店の場合、農家などから材料を仕入れて店舗で調理し提供することが多いです。自社で農場などを確保して製造し、実店舗に輸送するルートを作るイメージです。既存事業の一連の流れを自社のみで担えるため、効率的かつ低コストな事業の運営が可能です。
③【集中型】自前の技術を他分野に応用する
自前の技術を他分野に応用する戦略です。具体的には食品事業をしている企業がバイオ事業に参入したり、カメラレンズの製造事業をしている企業が医療機器事業に参入したりするイメージになります。
全く関係ないように見えますが、自社が既存の商品やサービスで培った技術や知識を、他分野に応用し事業拡大ができます。
④【集成型】既存事業とは無関係の新規事業を立ち上げる
既存事業とは無関係の新規事業を立ち上げる戦略です。多角化の中で、リスクが高いといわれています。
ただし、複数の事業が成功した場合、会社全体のリスク分散につなげることができます。市場や分野を超えた事業拡大をすることで、会社全体の新たな価値をつかめるでしょう。
アンゾフマトリクスを活用する4つのポイント
ここからは、アンゾフマトリクスを作成するのか、注意点なども一緒にご紹介していきます。ぜひ確認してください。
ポイント①施策をたくさん洗い出す
まずは、施策を洗い出すことが大切です。自社の方針や優先事項などを考えずに、まずは施策をできるだけたくさん出すことで、様々な方向のアイデアが出てくるでしょう。
自社の方針や優先事項を考えてしまうと、施策やアイデアが行き詰まることもあります。施策を様々な方向から出し、精査する方法が有効です。
ポイント②自社に見合った施策から取り入れる
次に、自社に見合った施策から取り入れることも大切です。本記事では様々な成長戦略を紹介しましたが、実際企業で取り入れやすいものは低リスクかつ低コストの成長戦略でしょう。
具体的には、市場浸透戦略の1つとして、自社商品の販売サイトの見直しなどが挙げられます。
ポイント③複数の部署で連携して取り組む
複数の部署で連携して取り組むこともポイントです。1つの部署だけで進めていくと、予算や人材のリソース不足などの問題を抱える可能性があります。複数の部署で連携することで予算はもちろん、施策を練る際も様々なアイデアが生まれるでしょう。
ポイント④戦略にはリスクが伴うことも理解しておく
最後に、戦略にはリスクが伴うことも理解しておきましょう。先述したように成功戦略には様々な種類があり、施策によっては高リスクです。予算や自社の状況をしっかりと見極め、慎重に戦略の選定を行うことが大切です。
アンゾフマトリクスと併用するとよい他のフレームワーク
最後に、アンゾフマトリクスと併用がおすすめのフレームワークをご紹介します。成長戦略を行う上で大切なフレームワークばかりなので、ぜひ確認してください。
事業活動を価値の連鎖として捉える【バリューチェーン】
1つ目は「バリューチェーン」と呼ばれる、事業活動を価値の連鎖をして捉えるフレームワークです。日本語では「価値連鎖」と呼ばれます。商品やサービスを顧客に届けるまでの工程を分類し、それぞれどのような価値を提供しているか表します。
バリューチェーンを行うことで、自社の事業活動がユーザーにとってどのような価値があるのか、どのような強みや弱みがあるのかを確認できます。そのため、成長戦略の方向性や改善策を練る際にも有効的です。
資産の投資分配を判断する【PPM分析】
「PPM分析(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントをアルファベット)」とは、資産の投資分配を判断する分析手法です。
縦軸を「市場の成長性」、横軸を「市場のシェア率」として基礎を作り、さらに「高」「低」という状態に現事業を分割し、どこに投資分配をするか施策します。
まとめ
本記事では「アンゾフマトリクスとは?成長戦略発見のポイントや多角化の型」についてご紹介しました。経営ではもちろん、マーケティング施策を実行する上でも大切な基礎となる部分であり、思考法でもあります。
自社の強みや武器を存分に発揮させるためにも、ぜひアンゾフマトリクスを活用し、情報整理を行ってみてください。うまく活用することで、自社の新しい価値を見いだせるきっかけになるでしょう。