客単価UPにつながるクロスセリングとは?手順と成功のポイント
「客単価を上げるにはクロスセリングがいいと聞いたけど、実際にどういうものなのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、クロスセリングの意味や目的について紹介していきます。「どんな手順でクロスセリングを行えばいいのか」などもまとめているので、客単価を上げて売上をグロースさせたい方はぜひ最後までお読みください。
客単価を上げる戦略「クロスセリング(クロスセル)」とは
クロスセリング(クロスセル)とは、既にサービスを利用している既存顧客や、利用を検討している見込み顧客に対して、関連製品・関連サービスを一緒に提案することです。
たとえばパンケーキを買った顧客に対して「コーヒーがついたセットがありますが、いかがでしょうか」と提案することなどが挙げられます。
関連商品とのセットで割引になることなどを利用して、客単価を上げる戦略として使われます。
クロスセリングとアップセリングの違い
クロスセリングに似た言葉に「アップセリング」があります。この2つは「客単価を上げる」という目的は同じですが、アプローチが異なります。
・クロスセリング:購入する商品の関連商品を追加で販売すること
・アップセリング:購入しようとしていたものより、もっと上位の商品を勧めること
たとえばパンケーキを買おうとしていた顧客に対して、それよりも高い「フルーツパンケーキ」を勧めることがアップセリングに該当します。
どちらの手法も、顧客に納得してもらえないと「強引に押し売りされた」と思われてしまうので、しっかりと手法を学んでおく必要があります。
クロスセリングの代表的な3つの手法
クロスセリングの代表的な手法は3つあります。
・補完的な商品・サービスを訴求する
・関連商品・サービスを訴求する
・関連するプロモーションを提供する
それぞれについて、詳細に解説していきます。
補完的な商品・サービスを訴求する
顧客が選んだ商品・サービスを補完するものを訴求する手法です。たとえば、次のようなケースのことを指します。
・スマートフォンを購入する顧客に画面保護シートを訴求する
・自動車を購入する顧客にカーナビを訴求する
顧客に「確かに、追加でこれも買った方がいいな」と思わせることで、客単価の向上に繋がります。
関連商品・サービスを訴求する
顧客が選んだ商品・サービスに関連したものを訴求する手法です。具体的なケースは次の通りです。
・化粧水を購入する顧客に同じブランドの乳液を訴求する
・革靴を購入する顧客にクリーナーを訴求する
顧客に「一緒に買った方が楽だな」と思わせることで、客単価の向上に繋がります。
関連するプロモーションを提供する
顧客が選んだ商品・サービスに関連するプロモーションを提供する手法です。
たとえば「顧客が購入するものに関連したポイントカードを付与する」などが挙げられます。ポイントカードがあることで、顧客も「またここで買い物をしよう」と感じてくれるので、LTV(顧客生涯価値)の向上に繋がります。
クロスセリングの大きな4つのメリット
クロスセリングは単に客単価が上がるだけではなく、4つの大きなメリットがあります。
・コストを抑えて売上向上を図れる
・高い成約率が見込める
・リピーターを獲得しやすい
・単体では売れにくい商品・サービスの販売につなげやすい
それぞれについて解説していきます。
コストを抑えて売上向上を図れる
クロスセリングは、コストを抑えて売上の向上を図れます。なぜなら、既存客や温度感の高い見込み顧客に対してアプローチをするため、新規顧客を獲得する必要がないからです。コストを抑えつつ売上を最大化するためにも、クロスセリングは必須でしょう。
高い成約率が見込める
クロスセリングは、比較的高い成約率が見込めます。利用する商品・サービスの質をより良くするための提案なので、顧客も「確かにこれもあった方がいいし、ついでに買っておくか」と感じやすいためです。
リピーターを獲得しやすい
クロスセリングは、リピーターを獲得しやすいメリットもあります。メリットがある形で関連商品・サービスを訴求をしていくため、顧客に「一緒に便利なものを紹介してくれた。ちゃんと顧客のことを考えているんだな」と満足してもらえるようになると思います。
単体では売れにくい商品・サービスの販売につなげやすい
クロスセリングは、単体では売れにくい商品・サービスの成約に繋げやすくなります。たとえば「スマートフォンの保険」は単体では売れにくいサービスです。
ですが高額なスマートフォンを購入したばかりの顧客に「ご一緒に保険サービスへの加入はいかがですか?」と訴求すれば「高いものだし、念のために入っておくか」と思わせることができるでしょう。これはアップセリングにはない、クロスセリング独自のメリットです。
クロスセリングの2つのデメリット
クロスセリングは効果的な手法ですが、使い方を誤るとデメリットを引き起こします。
・顧客が購入を取り止める可能性がある
・イメージ悪化・顧客離れにつながることがある
2つのデメリットについて解説していきます。
顧客が購入を取り止める可能性がある
クロスセリングをすることで、顧客が購入を取り止める可能性があります。たとえば、パソコンを買おうとしている見込み顧客に「ご一緒にウィルス対策ソフトもどうですか?クリーナもいかがですか?」とクロスセリングの訴求をしたとします。
訴求の仕方次第では、顧客に「もしかして、他のもっと高いものも勧められるんじゃないかな?ここで買うのは怖いな」と思われてしまうかもしれません。そのため、事前にしっかりと「この訴求は顧客のメリットに繋がっているのか」を考えてから訴求する必要があります。
イメージ悪化・顧客離れにつながることがある
クロスセリングをすることで、イメージ悪化や顧客離れにつながることがあります。
たとえば、顧客単価を上げることだけを目標に無理な押し売りをしていると、顧客から「あそこは強引にものを売ってくるから、もう使わないでおこう」と思われるかもしれません。イメージを悪くしないためにも、あくまでも「顧客を第一」に考える必要があるでしょう。
クロスセリングに向いているビジネスの例
クロスセリングに向いているビジネスは3つあります。
・ECサイト
・飲食店
・金融業界
それぞれどのようなクロスセリングが向いているかを解説していきます。
ECサイト
ECサイトでは、次のようなクロスセリングが向いています。
・購入ボタンの近くに関連商品を掲載する
・商品をカートに入れた後に「この商品を買った人が見ている関連商品」を掲載する
ECサイトの場合、今までの閲覧・購入データから「顧客が興味を抱いているもの」を関連商品として表示させられるので「顧客に押し売り感を抱かせにくい」のが特徴です。そのため、ECサイトを運営する場合は、顧客に関連商品を見せるようにしましょう。
飲食店
飲食店では「単品を注文した顧客に、お得なセット商品を訴求する」というクロスセリングが向いています。
たとえば「ハンバーガーを買う顧客にポテトとドリンクのセットを訴求する」ような形です。顧客からすると「お得に食べられる」というメリットがあるので、押し売り感を抱かせにくいのが特徴です。
それでいて客単価はちゃんと上がっているので、双方ともにメリットがある理想的なクロスセリングと言えます。
金融業界
金融業界では、顧客は「将来のお金が心配だから、今のうちから少しでも増やしておきたい」という大きな悩みを持っています。ですが1つの商品だけでは、どうしてもお金への不安を解消することはできません。
そのため「他にもこういう保険がありますよ。将来のためにどうですか?」という形でクロスセリングをすることで、顧客に納得してもらいつつ顧客単価を上げることが期待できます。
もちろん、相手の危機感を利用して押し売りをすると、不信感に繋がってしまう恐れがあるので、その点には注意しましょう。
クロスセリングを行うのに適したタイミング
クロスセリングを行うタイミングは、次の2つが適しています。
・顧客が商品・サービスの購入を検討しているとき
・顧客が商品・サービスを購入したとき
このタイミングであれば、顧客も商品・サービスを買おうとしている(買っている)ので、クロスセリングをしても「押し売り感を抱かせにくい」と思います。
クロスセリングは使い方を間違えると逆効果になるので「このタイミングでクロスセリングをするように」など、マニュアル化するのが効果的でしょう。
クロスセリング実施までの3つの手順
クロスセリングを実施するまでには、3つの手順があります。
・LWP分析を行い顧客情報を収集・整理する
・顧客ニーズを分析する
・ターゲットを選定し行動計画を立案する
正しい手順を踏まないと、効果が薄くなってしまうので、事前に確認しましょう。
1.LWP分析を行い顧客情報を収集・整理する
まずはLWP分析を行い、顧客情報を収集・整理しましょう。LWP分析とは「今までの顧客の行動内容などを基にして、クロスセリングの拡大の余地があるかを分析する」フレームワークのことです。
L=List(顧客のリスト):対象となる顧客のリストを洗い出すこと
W=What(行動内容):過去の顧客の行動から、今後のポテンシャルについてフラグ付けをする
P=Pace(頻度):接触や受注のペースはどれぐらいかをフラグ付けする
上記のように、顧客のリストを洗い出したら「行動内容」「頻度」を基に対象となり得る顧客を抽出しましょう。
2.顧客ニーズを分析する
顧客のリストの洗い出しが終わったら、顧客ニーズを分析します。「過去の取引実績」「拡大の余地」をランク付けしたら、テーブル型のマトリクスを使ってマッピングを行いましょう。
C 過去の取引実績:高 拡大の余地:低 |
A 過去の取引実績:高 拡大の余地:高 |
D 過去の取引実績:低 拡大の余地:低 |
B 過去の取引実績:低 拡大の余地:高 |
マトリクスは「縦軸が過去の取引実績の高低」「横軸が拡大の余地の高低」です。
・A:過去の取引実績があり、拡大の余地があるため、もっとも優先度が高い
・B:過去の取引実績は少ないものの、拡大の余地があるため、新規開拓先の候補
・C:過去の取引実績はあるものの、拡大の余地はないので、現状維持
・D:過去の取引実績がなく、拡大の余地もないため、もっとも優先度が低い
このようにフレームワークに当てはめることで「どの顧客に優先的にアプローチを行うべきか」が明確になります。
3.ターゲットを選定し行動計画を立案する
アプローチを行うターゲットを選定して、行動計画を立案します。最初はもっとも優先度が高い「A」の顧客からアプローチをしていきましょう。
たとえば「営業の訪問回数や提案頻度を増やす」などのアプローチが挙げられます。LWP分析を使うことで、効果的にクロスセリングを行えます。ぜひ実践しましょう。
クロスセリングを成功させる2つのポイント
クロスセリングを成功させるには、2つのポイントがあります。
・顧客にとってのメリットを明確に示す
・顧客視点で考えて押し売りにならないようにする
誤ったクロスセリングをしてしまい、イメージ悪化や顧客離れを引き起こさないためにも、事前に確認しましょう。
顧客にとってのメリットを明確に示す
クロスセリングを成功させるには、顧客にとってのメリットを明確に示しましょう。
「これも一緒に買うことで、快適になりますよ」
「保険に一緒に入ることで、何かあった際に助かりますよ」
このように「これも一緒に買うことで、あなたにこういうメリットがありますよ」を明確化するのが大切です。顧客から「なんでこれも買う必要があるんですか?」という質問が返ってこないようにアプローチをしましょう。
顧客視点で考えて押し売りにならないようにする
クロスセリングは「顧客視点で押し売りにならないようにする」ことが大切です。どうしても「自社の売上やノルマ達成」のために、顧客視点が抜けてしまいがちです。顧客視点が抜けたまま押し売りをすると、顧客離れを引き起こしかねません。
中長期的に見ると「顧客ファースト」でクロスセリングを行った方が利益に繋がるので、押し売りにならないように注意しましょう。
まとめ
客単価を増やして、利益を最大化させるためには、クロスセリングは必須の手法です。
ですが使い方を誤ると、逆に顧客離れを招いてしまうので、成功させるにはしっかりとした手順を踏む必要があります。本記事の「クロスセリング実施までの3つの手順 」「クロスセリングを成功させる2つのポイント 」などを参考にして、ぜひ実践してみてください。