データドリブン経営とは?導入するまでのプロセスもわかりやすく解説
「データドリブンとは何かを知りたい」「具体的なデータドリブンの導入方法がわからない」このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。本記事では、データドリブンの概要や導入までのプロセス、成功事例などを解説していきます。
ぜひ本記事を参考にデータドリブンを導入してみてください。
データを基に経営・販売を行う手法「データドリブン」
データドリブンとは経験や勘ではなく、売上やWeb解析などのデータを基にビジネスの判断や課題解決をする業務プロセスです。経営層のみならず組織内すべての人がデータドリブンを活用することで、より良いビジネスを展開できるでしょう。
どうして今データドリブン経営が注目されているの?
データドリブン経営が注目されている理由は大きく分けて3つあります。それぞれ解説していきます。
テクノロジーの進化
デジタルテクノロジーの進化によって、ユーザーの行動履歴や属性、市場トレンドのデータ化が可能となり、デジタルマーケティングが発展しました。
これに伴い、デジタルツールを活用した精度の高い顧客管理が実現し、データドリブンマーケティングに取り組む企業が増えています。
消費者の価値観の多様化
インターネットの普及により、消費者の価値観は多様化しています。消費者は実店舗とデジタルを行き来しながら買い物を楽しむため、多様化した顧客ニーズを満たす商品やサービスの提供が難しくなっているといえます。
そのため、さまざまな施策から得られるデータを基に効果検証を行い、マーケティングに活用する必要があります。
顧客ニーズのスピード化
デジタル化により市場の移り変わりが激しい社会となっています。。常に新しい製品やサービスが出現しており、顧客も常に新しいものを求めています。顧客ニーズをスピーディーに掴むためには、データを活用したデータドリブンが有効となるのです。
データドリブン経営を導入する5つのメリット
次に、データドリブン経営を導入するメリットを5つ解説していきます。
売り上げや利益率の改善
ユーザーのニーズや市場トレンドをデータから読み取ることで、打つべき施策とアプローチ手法が明確となります。そのため、経験や勘ではなく客観的な数値に基づいたマーケティングを展開することにより、売上や利益率の改善が見込めるでしょう。
顧客ニーズの把握
顧客が何に悩み、何を求めているのかは肌感覚では掴みにくい上に、調査するマーケティング担当の主観が入るおそれがあります。しかし、データを用いた分析によって、客観的な顧客ニーズを読み取ることができます。
ボトルネックの特定と解消
ボトルネックとは、全体の業務プロセスの中で成果に悪影響を与えている要因のことです。プロセスや工数が複雑であるほど、ボトルネックの特定と解消には時間がかかります。
そこでデータ分析をすることで、ビジネスの全体像を数値に落とし込むことができ、ボトルネックの早期発見につながります。
スピーディーな意思決定
経験や勘に頼ったビジネスの意思決定は、顧客ニーズや市場トレンドの変化に対して対応が遅れてしまいます。データドリブンを活用すれば、データに基づいた根拠のあるスピーディーな意思決定を下せるでしょう。
DX推進を加速させる
テクノロジーの進化が進む現代社会において企業が生き残っていくためには、DXの推進は必須です。
まず社内のデータ基盤を整え、これまでの経験や勘を用いたビジネスモデルの改革をしましょう。データドリブンの導入によって社内の変革ができ、DX推進につながっていくのです。
データドリブン経営の3つの注意点
データドリブン経営には大きく分けて3つの注意点があります。具体的に下記で解説していきます。
導入環境を整えるためのコストがかかる
データドリブンは「ICT」と呼ばれる情報通信技術を活用しています。
そのためデータドリブンの導入には、スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器を社員に支給したり、ITシステムを導入したりするコストがかかります。ツールや機器を導入する際は、費用対効果に見合うかどうかを確認しておきましょう。
専門スキルを持った人材の確保が必要
データドリブン経営のためには、データを扱える人材が必要不可欠です。集めたデータを分析し、ユーザーのニーズに適した施策を立案しなくては、データドリブン経営は成り立ちません。
専門スキルを持つ人材の育成のために、社員にデジタル教育を施していく必要があるでしょう。
データ共有のための各部署の連携が必要
データドリブンでは精密なデータ分析を行うために、データを一元管理します。
しかし、データは各部署で独自に蓄積しているケースも多く、部署間で連携を取る必要があります。データドリブンへの理解を社内に徹底し、スムーズな連携が取れる環境づくりを図りましょう。
データドリブン経営を導入するまでの4つのプロセス
データドリブン経営を導入するまでのプロセスを、4つに分けて解説していきます。
データの収集と蓄積
まずは各部署に点在しているデータを収集します。データを扱うシステムが独立している企業では、データを一元管理できるツールを導入すると収集がスムーズでしょう。次に、Webサイトやアプリ上の顧客情報の収集と蓄積をしていきます。
集めるデータは企業の扱う製品・サービスによって異なります。データ分析の目的を明確にして、データを収集しましょう。また、目的に応じてITツールやシステムを導入し、社内環境の整備を進める必要があります。
データの可視化
データは収集するのみでは活用できません。データを分析するためには、データを目で見て確認できる状態にしておく必要があります。しかし、手作業による可視化は時間と労力がかかってしまいます。
データの可視化には、後述するBIツールの導入をおすすめします。
データの分析
可視化されたデータを基に分析を行います。目的に応じた分析を行い、今後のマーケティング施策につなげていきます。しかし、データ分析には、高いスキルを持つ人材や専門家が必要となります。
自社での分析が難しい場合は、コンサルティング会社など専門会社に依頼してもよいでしょう。
アクションプランの確立と実行
分析したデータを活用し、今後のアクションプランを確立します。経営戦略やマーケティング施策、組織変革などの意思決定を下し、アクションプランを実行します。実行したアクションプランは、継続したPDCAサイクルで効果検証を行い、ブラッシュアップしていきましょう。
データドリブン経営を実現するためのおすすめツール
データドリブン経営を実現するツールにはさまざまな種類があります。ここでは7つのおすすめツールを紹介します。
経営判断のための「BI」
BIツールは企業に蓄積されたデータを分析・可視化し、ビジネスの意思決定に役立てるシステムです。BIツールでは社内に分散しているデータの統合と分析ができるため、迅速な意思決定につながります。
また、データの収集からレポート抽出までを一気通貫で処理できるのもBIツールのメリットです。
データを蓄積するためのプラットフォーム「DMP」
DMPはインターネット上に多数あるサーバーに蓄積されたデータを一元管理できるプラットフォームです。DMPでは、ユーザーの行動履歴や属性などのマーケティングに必要なデータが把握できます。
ユーザーごとに適したマーケティングが可能となり、高い広告効果を期待できるでしょう。
顧客データを一元管理「CRM」
CRMツールは、顧客データを一元管理できるシステムです。企業では人の手では管理が困難な多くの顧客データを抱えています。CRMツールの導入によって顧客情報をシステムで管理でき、業務効率化につながります。
マーケティング活動を効率化する「MA」
MAツールは、マーケティングにおける見込み顧客の獲得から受注までを効率化できるシステムです。マーケティングの自動化によって見込み客を育成し、受注確率の高まった顧客を営業へ引き継ぐことができます。
営業支援システム「SFA」
SFAツールは営業活動を効率化できるシステムです。SFAツールの導入によって、個人の経験やスキルに依存していた営業活動を、組織内で一元管理できます。営業活動を共有すれば部門全体での案件管理が容易となり、作業の効率化と売上向上につながります。
顧客情報の収集および統合「CDP」
CDPはユーザーのデータを収集し、管理、分析ができるプラットフォームです。CDPで収集できるデータはユーザーの行動履歴や属性はもちろん、住所や氏名などの個人情報にまで及び、より精密な分析ができます。
アクセス状況を解析「Web解析ツール」
Web解析ツールは、Webサイトへアクセスしたユーザーの行動や、検索キーワードを解析できるシステムです。Web解析ツールを活用すれば、ユーザーがWebサイト上でどのような動きをしたのかを把握できます。
これによってWebサイト上の問題点を分析でき、コンバージョン数の向上が見込めるでしょう。
データードリブン経営導入の成功事例
実際にデータドリブン経営を導入した企業の成功事例を見ていきましょう。
最適な体験を提供「USJ」
まずは人気テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」を運営する合同会社ユー・エス・ジェイ(USJ)です。これまで本テーマパークのチケットは、エントランス窓口で購入する人が多く、個人を特定するデータの収集ができていませんでした。
そこで顧客データを取得すべく、ECサイトのリニューアルに取り組んだ結果、オンラインチケットの販売数が2014年からの3年間で300%改善しました。
また、チケットのQRコードを読み取って入場する「スマートゲート」の設置や、顧客のパーク内行動のデータ化に着手しました。このような施策によって、公式アプリでは顧客一人一人に応じたレコメンド機能が実装されるようになりました。
USJではテーマパークを楽しんでもらうだけでなく、顧客にパーソナライズした体験の提供を実現したのです。
独自のデータ活用法を確立「パルコ」
次の事例はファッションビル「PARCO」を展開するパルコです。これまでもパルコは「来客数」と「買い物をした顧客数」のデータ取得はできていました。しかし、「誰が購入し、誰が購入しなかったのか」という詳細データまでは取得できていませんでした。
そこで、店舗情報や商品の特徴を掲載しているブログに、店頭へ行かずに商品を購入できる「カエルパルコ」というショッピングカートボタンを設置しました。その結果、「来店した顧客が買い物をしたのか、そうでないのか」が把握できるようになりました。
このように、パルコではこれまで把握できなかったデータを取得し、活用する土壌が作られています。そして現在は、独自のデータ活用法「DAPC」に取り組んでいます。「DAPC」とは、顧客に新しい価値を提供するために回すサイクルのことです。
構築したデータ(Date)基盤でデータの蓄積と分析(Analytics)をし、顧客の行動を把握します。得られた顧客行動をどのように接客へ活用するかを企画し(Planning)、実際に顧客とのやり取り(Communication)を通じてその効果を検証する、というのが具体的なサイクルです。
CVR45%増を実現「JTB」
旅行会社JTBは、2018年にDMPを基盤としたデータドリブンの取り組みを行いました。統合データ基盤、顧客分析、マーケティングアクションの3チームを立ち上げ、データドリブンに向けた体制を構築したのです。
この組織変革の中で生まれた「出張女子」というプロジェクトでは、CVR45%増を実現しました。まず、出張で宿泊する顧客のうち、女性は男性と比べて単価が10%高いというデータが判明したのです。
女性は「男性と違うフロアに宿泊したい」「メイクを落としたら外に出たくない」といった理由から、高単価の購買をしていると仮説を立て、女性向けのサービスを立案しました。
そして、女性の出張に適したサービスが付帯したプランを打ち出した結果、CVRが45%もアップしたのです。
まとめ
テクノロジーの発展が加速した現代社会では、データドリブンの活用が必要不可欠です。データドリブンの導入によって、経営はデータに基づいたスピーディーな意思決定を下せるようになります。
自社の目的に合わせて分析するデータを見極め、必要に応じたツールの導入もデータドリブンの活用には重要です。本記事で紹介した成功事例も参考に、データドリブン経営をしてみてください。